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2022.06.24

2年間続いた会社での暴行…当事者のベトナム人は今 技能実習制度にはらむ問題とは…【岡山】

ベトナム人技能実習生の男性が、岡山市の建設会社で、日本人従業員に暴行を受けた問題。男性は今、広島市の会社で新しい生活を始めています。実習制度にはらむ問題点とあるべき姿とは。この男性を例に考えます。

午後7時半、仕事を終えて、会社の寮に帰ります。ベトナム人技能実習生のグエンさん、過酷な日々を抜け出し2022年4月から広島市の建設会社で新しい生活を送っています。

(グエンさん・仮名)
「広島の生活はとても楽しくて、仕事も良い」

妻と5歳の娘を残し、2019年に来日したグエンさん、待っていた岡山市の建設会社での生活は過酷なものでした。

(グエンさん)
「岡山の生活は寂しかった。みんなと打ち解けられず、気持ちも分かってもらえなかった」
ベトナム人実習生問題01
グエンさんは、複数の日本人従業員から2年に渡って暴行を受け続け、2022年1月、広島県福山市の労働組合に保護されました。
ベトナム人実習生問題02
(2022年1月 会見するグエンさん)
「家族やまわりの実習生に迷惑をかけたくないので、我慢した」
ベトナム人実習生問題03
会社と監理団体は、日常的な暴行や保護責任を果たせなかったことを認め、謝罪し、補償金を支払うことで示談が成立しています。今回のような問題が、なぜ起きてしまったのか、労働組合の武藤貢執行委員長は指摘します。

(福山ユニオンたんぽぽ 武藤貢執行委員長)
「技能実習制度は、そもそも大きな問題があった。もうまっとうな移民政策、労使対等の原則が守られて、働く人の人権が保障・担保されるような制度設計をすべき」
ベトナム人実習生問題05
外国人技能実習制度は1993年に始まりました。国内の技能実習生は現在約35万4000人、このうち約6割がベトナム国籍となっています。
ベトナム人実習生問題06
制度の目的は「発展途上国へ技術を伝えること」しかし、目的を果たせず、「人手不足を補う労働力」として扱われ、過重労働や賃金不払いなどの例が後を絶ちません。
ベトナム人実習生問題07
(福山ユニオンたんぽぽ 武藤貢執行委員長)
「今回の件は、(グエンさん)暴力を訴えて、写真も提供して、監理団体に言っている。速やかに他の会社に移すというのが当たり前だった。それをやらない。会社に対する忖度(そんたく)があると思う」
ベトナム人実習生問題08
実習生と会社を仲介する監理団体。海外から実習生を受け入れ、会社に紹介し、実習が適切に行われているか会社を指導することで、毎月一定の監理費を受け取っています。
ベトナム人実習生問題09
今回のケースでは、グエンさんが解体作業中にしたケガが、自転車での転倒事案として処理されるなど、監理団体の対応も問題視されました。
ベトナム人実習生問題10
実際、今回の岡山市の監理団体は、適切な対応ができていなかったとして、国から許可を取り消され、今後5年間、実習生受け入れ業務ができなくなりました。
	 ベトナム人実習生問題11
(福山ユニオンたんぽぽ 武藤貢執行委員長)
「人権侵害だよね。実際に彼は会社も分からず、仕事の具体的な中身も分からずに日本に来て、配属される。だから奴隷制度と言われる」

技術を学ぶために来日した技能実習生。しかし、期待とは違う現実に苦しみ、失踪するケースも増えています。
ベトナム人実習生問題12
グエンさんの受け入れを決めた、広島市の建設会社です。
ベトナム人実習生問題13
(有限会社大斗 堀井直規専務)
「何か1つでもベトナムに帰って、日本の文化や言葉を覚えて帰ってもらえたら。良いところだったよと思ってもらいたい」
ベトナム人実習生問題14
会社では、すでに2人のベトナム人実習生が働いています。その2人が、同じ仲間であるグエンさんの境遇を知り、一緒に働きたいと会社に思いを伝えました。

(同じ会社で働く実習生)
「同じベトナム人技能実習生が暴行されている動画を見て、とても嫌な気持ちになって、彼を助けに行った。一緒に働きたいと思った。今広島で一緒に仕事ができて、少しずつ頑張っている」
ベトナム人実習生問題15
(同じ会社で働く実習生)
「優しい。一生懸命働いている」

グエンさんが実習生として働ける期間は約1年、試験を受けることで、2年延長することもできるため、グエンさんはもう少し日本で頑張りたいと前を向いています。

(グエンさん)
「暴行を受けたことは、家族を心配させないように言わない。これからも自分の胸に秘めておきます」

希望を胸に新生活を送るグエンさん。胸に秘めると決めた岡山での日々は、外国人技能実習生の制度の在り方に一石を投じました。
ベトナム人実習生問題16