2022.08.01
認知症の70歳女性が”演劇に挑戦” 共演の夫は本番で”思いを独白” その時ハプニングが…【岡山】
老いや認知症をテーマに演劇をする岡山の劇団「OiBokkeShi(オイボッケシ)」。認知症患者などが出演する新しい舞台が7月、岡山県奈義町で上演されました。演劇を通して伝えたかったこととは。
[7月17日 本番当日]
もうすぐ幕が上がります。劇団「OiBokkeShi」の新作です。96歳の看板俳優とともに舞台に立つのは、認知症の人や介護する人。脳性まひの女性や、コミュニケーションが苦手な若者など。ほとんどが、演劇経験はありません。
老いや認知症をテーマに数々の作品を世に送り出してきた、劇団の主宰、菅原直樹さん(39)は、これまで誰も見たことがない舞台に挑戦しました。
(劇団OiBokkeShi主宰・菅原直樹さん)
「認知症だったり障害だったり。それぞれ生きづらさを抱えているのではないか。僕自身も感じているところがあるが、そういった皆さんに参加してもらって、舞台の上で自分たちの居場所をつくれたらいいかなと思った」
[岡山県奈義町・竹上康成さん宅]
(食事を妻の口に運ぶ康成さん)「ゆっくりゆっくり。はい、ぱくっ」
竹上康成さん(68)と妻の恵美子さん(70)も初めて演劇に参加します。
恵美子さんは認知症で、9年前から、康成さんが自宅で介護しています。2人は中学校の元教師。恵美子さんは英語を教え、優しくて生徒から人気の先生でした。
康成さんは、病院で恵美子さんの診断結果を聞いた日のことが忘れられません。
(竹上康成さん)
「彼女が『お父さん大丈夫だから。私は楽天的だから大丈夫だから』と慰めてくれた。それはもっとつらかった。後悔した。『もっと早く気が付いていれば何か出来ることがあっただろう』と思って…」
2021年春。康成さんは(劇団主宰の)菅原さんに、『演劇に出てみないか』と誘われました。
(竹上康成さん)
「『この人(恵美子さん)も一緒だけどいいですか』と言ったら『あぁ、いいですよ』と。うれしかったなぁ…『何でもあり』という発想はすごく新鮮だった。菅原さんはどういうふうに言っても、行動しても、受け入れてくれた」
[3月 稽古]
演劇の舞台はとある町の民宿。映画撮影の下見にやって来た監督と、エキストラ出演する町の人たちが繰り広げる物語です。
康成さんと恵美子さんは夫婦の役、恵美子さんは認知症という設定で、せりふが覚えられなくても、康成さんの問いかけに応えれば、ストーリーが進むように工夫されています。
(康成さん)「お母さん変わってないな」
(恵美子さん)「変わってないよ。全然変わってない」
(菅原直樹さん)「・・・はいOKです。とてもいい感じですね。素晴らしいです」
(恵美子さん)「面白いですね。楽しかった」
この日の稽古では笑顔を見せていた恵美子さんでしたが、病状は悪化していました。
[自宅で暴れる恵美子さん]
(康成さん)「いてて…」(恵美子さん)「このアホ!」
恵美子さんは2022年春、施設に入ることになり、しばらく稽古場に来ることができなくなりました。
[施設を訪ねる康成さん]
(竹上康成さん)「みんな会いたがっているけんな。またみんなと一緒に劇しような、お母さん」
[7月17日 本番当日]
本番当日、楽屋にやってきた恵美子さん。仲間に拍手で迎えられました。
[メイクする恵美子さん]
(康成さん)「きれい、きれい。やったな。よかったな。これで出られるぞ」
“エキストラの宴“が開演しました。
舞台袖で待つ康成さんと恵美子さん。出番がやってきます。
[せりふ]
(竹上康成さん)「ひょっとしてこの民宿にもご迷惑かけることになると思うので、よろしくお願いします」
[歌]
無意識に手拍子する恵美子さんに合わせ、脚本には歌のリズムを取るシーンが加わりました。
[康成さん1人]
妻の病気を語る大事なシーンです。
(竹上康成さん)
「ある日、妻は言うんです。『帰りたい!』って。私が、『家にいるよ、家に帰っているじゃない』と言ったんです。そうしたら…怒りだして…けんかになって」
その時。舞台のそでにいた恵美子さんが、康成さんに駆け寄ろうと、舞台に出てしまいました。
(他の役者)「ありゃ、みっちゃん出てきたで」
そんなハプニングも、他の役者や観客は受け入れます。
(監督役の役者)「“いつもの皆さんのまま”でいいんです。あなたも、あなたも、あなたも…さあ、皆さん、自信を持って、楽しんで演じましょう!」
[終演後あいさつ]
(菅原直樹さん)
「この奇跡に皆さん立ち会っていただきうれしく思います。この出演者は1年前はそちら(客席)にいた方々です。この芝居を見て、ぜひやりたいなと思ったら、ぜひこちらの世界に入っていただけたらと思います」
認知症でも、障害があっても、自分らしく輝ける場所。劇団が目指したその場所は、舞台の上に確かにありました。
[7月17日 本番当日]
![オイボッケシ 奈義01](/cgi-image/20418/20418_ouutdwHQNXKHFhFYtnsdovlaEkixOIJlojkrMotMfczspFNLUb.jpg)
![オイボッケシ 奈義02](/cgi-image/20419/20419_WuzWaHSuUqjBfaWaFwvzhAQJjYbUuhtqbiLfeWWWCLujGwtJTJ.jpg)
(劇団OiBokkeShi主宰・菅原直樹さん)
「認知症だったり障害だったり。それぞれ生きづらさを抱えているのではないか。僕自身も感じているところがあるが、そういった皆さんに参加してもらって、舞台の上で自分たちの居場所をつくれたらいいかなと思った」
![オイボッケシ 奈義03](/cgi-image/20420/20420_IfYMpDOusnqhXVBxgLlfXXhrebXaBnfvVtSYJlPGoVzGYezzEb.jpg)
(食事を妻の口に運ぶ康成さん)「ゆっくりゆっくり。はい、ぱくっ」
竹上康成さん(68)と妻の恵美子さん(70)も初めて演劇に参加します。
![オイボッケシ 奈義04](/cgi-image/20421/20421_BDaWMGkUJrmoVwxRcPdAPTdhyISsAgxobuLKottihODOcWwgqI.jpg)
![オイボッケシ 奈義05](/cgi-image/20422/20422_QNcLbrghbMhKvQUAArPqrfgvwGEndPbwpVrpHTKAiEfOrMBBbo.jpg)
![オイボッケシ 奈義08](/cgi-image/20425/20425_cgItSmCldzrkdgFUfaVNTRcmhTikblJhjrXCKxtrurmiUHSmyz.jpg)
「彼女が『お父さん大丈夫だから。私は楽天的だから大丈夫だから』と慰めてくれた。それはもっとつらかった。後悔した。『もっと早く気が付いていれば何か出来ることがあっただろう』と思って…」
![オイボッケシ 奈義09](/cgi-image/20426/20426_JXcwrwbUfJHBoMzlzLXzsXtmUaqFknAKvSQTyMSYxdrHDrOqxX.jpg)
(竹上康成さん)
「『この人(恵美子さん)も一緒だけどいいですか』と言ったら『あぁ、いいですよ』と。うれしかったなぁ…『何でもあり』という発想はすごく新鮮だった。菅原さんはどういうふうに言っても、行動しても、受け入れてくれた」
[3月 稽古]
演劇の舞台はとある町の民宿。映画撮影の下見にやって来た監督と、エキストラ出演する町の人たちが繰り広げる物語です。
![オイボッケシ 奈義10](/cgi-image/20427/20427_xzaMTmNCRsHzvPxKAFWuRRgaNbyNtFuoQOafuxJmRblAhGScky.jpg)
(康成さん)「お母さん変わってないな」
(恵美子さん)「変わってないよ。全然変わってない」
![オイボッケシ 奈義11](/cgi-image/20428/20428_PKVOXwOAiuhOkBcVgHKxzuzIwaAySCgwKnWFogsNFEHhGJeowU.jpg)
(恵美子さん)「面白いですね。楽しかった」
![オイボッケシ 奈義12](/cgi-image/20429/20429_lDBnpLjsAqpqudJbEihenqxWWrdNkFUoUGHLlYNolJgfdHdJLH.jpg)
[自宅で暴れる恵美子さん]
(康成さん)「いてて…」(恵美子さん)「このアホ!」
![オイボッケシ 奈義13](/cgi-image/20430/20430_cAwpzGQjRHjBBFOiJNXMeytArkshYrlBFeJoRGctIeXSCPSAlI.jpg)
[施設を訪ねる康成さん]
(竹上康成さん)「みんな会いたがっているけんな。またみんなと一緒に劇しような、お母さん」
![オイボッケシ 奈義14](/cgi-image/20431/20431_wCBqjSxvMwFuUQKxEGQnfUIikuvVPEuDNaBsymannzBxfSPgJh.jpg)
本番当日、楽屋にやってきた恵美子さん。仲間に拍手で迎えられました。
[メイクする恵美子さん]
(康成さん)「きれい、きれい。やったな。よかったな。これで出られるぞ」
![オイボッケシ 奈義15](/cgi-image/20432/20432_uldhwMnifMmCqWTHgqWylECzsRfvPdYntnPksAlhAdGbPvqUEH.jpg)
![オイボッケシ 奈義16](/cgi-image/20433/20433_KpSAmzncoorAovYoguTwzBXLfBpzEjFEnmlnkyqiFekCJHIBJE.jpg)
[せりふ]
(竹上康成さん)「ひょっとしてこの民宿にもご迷惑かけることになると思うので、よろしくお願いします」
![オイボッケシ 奈義17](/cgi-image/20434/20434_JzgwKuftrATsErsKepMaEAYCVVRNhXDXmdlywvXmFJrJjVULmn.jpg)
無意識に手拍子する恵美子さんに合わせ、脚本には歌のリズムを取るシーンが加わりました。
![オイボッケシ 奈義18](/cgi-image/20435/20435_DfwSwqabQbQrUDncAAYYGfkbScvgnapdsiMHqFLXduiynEWres.jpg)
妻の病気を語る大事なシーンです。
(竹上康成さん)
「ある日、妻は言うんです。『帰りたい!』って。私が、『家にいるよ、家に帰っているじゃない』と言ったんです。そうしたら…怒りだして…けんかになって」
![オイボッケシ 奈義19](/cgi-image/20436/20436_xxCMDBcBIQCGBxftGjxeUhlPWgCHgKrIRwctcaRSbbsxUkkqCY.jpg)
![オイボッケシ 奈義20](/cgi-image/20437/20437_BkyAKkBLcIWvvWvNlSBVnCsHcljmssRsSwfRRXnyYTikrdlpAv.jpg)
![オイボッケシ 奈義21](/cgi-image/20438/20438_mwjrDCdLFAjJfKJtUjAfVVcJfhjfIsVnOWAxJpnFQTcQfVwIDK.jpg)
![オイボッケシ 奈義22](/cgi-image/20439/20439_gYmJFUmXurWprQGtDHJMAbfFBARWXNOVLmKyzseGbFCHkklaUd.jpg)
[終演後あいさつ]
(菅原直樹さん)
「この奇跡に皆さん立ち会っていただきうれしく思います。この出演者は1年前はそちら(客席)にいた方々です。この芝居を見て、ぜひやりたいなと思ったら、ぜひこちらの世界に入っていただけたらと思います」
![オイボッケシ 奈義23](/cgi-image/20440/20440_siIJKvstdaGeEIwsfpmBsHQofLkuKcAYokhslzMTPaLIVYBalU.jpg)
![オイボッケシ 奈義24](/cgi-image/20441/20441_PVtCLYtthqKUJWGhYYxfDenqkDfMyjMbFiaHGTAiPltkBHmEUn.jpg)