備前焼の人間国宝、故・山本陶秀さんが旧日本軍の依頼で太平洋戦争末期に制作した備前焼の手りゅう弾が８月２日、岡山県などに寄贈されました。戦争の記憶を伝える貴重な品物です。

７７年前に備前焼で作られた手りゅう弾。

（生本ひなの記者）
「１つ１つ精巧に作られていて、ずっしりと重いです」

岡山県と備前市に寄贈されたのは４００個余りの手りゅう弾と約５０キロの破片です。後に備前焼の人間国宝に認定される故・山本陶秀さんが１９４５年頃制作したもので、大きいもので長さ約７センチ、重さは２５０グラムほど。１９８８年に自宅の庭から掘り出されたもので、備前市にある息子の備前焼作家、山本雄一さんの自宅に保管されていました。

なぜ陶器製の手りゅう弾が作られたのか。窯業考古学を研究している立命館大学の木立雅朗教授に聞きました。

（立命館大学　木立雅朗教授）
「鉄不足で鉄がない、火薬も少ない。それでも大量生産できて、各自が持つ武器を作るには陶器に寝入ったんだろう。社会が変われば焼き物もいろいろな形で使われてしまう。当時はそれをやらなければ生き残れなかった時代背景。人間国宝になるような方でも作ってしまう、いろいろな事を考えさせられる資料」

戦地では使われることなく今日まで残された陶秀さんの手りゅう弾。雄一さんは後世に伝えようと寄贈することにしました。

（備前焼作家　山本雄一さん）
「父もいかがな物と思いながら作ったと思う。こういう物まで作ったんだと、子供に見せて教えたい」

備前焼の陶芸家も戦争に巻き込まれた事実を伝えるこの手りゅう弾は今後、備前市歴史民俗資料館などで展示・保管される予定です。