2024.04.24
国の脱炭素政策へアプローチ…地元企業を巻き込んだ自治体の「地域間競争」始まる【急上昇N 岡山・香川】
関心の高い話題を詳しく解説する急上昇ニュースのコーナーです。4月24日のテーマは、自治体や企業が力を入れる「脱炭素」についてです。担当は前川記者です。
(前川裕喜記者)
4月19日に電気自動車EVについて、こんなニュースをお伝えしました。
国内への普及が課題も…EV販売台数世界一のBYDが中国地方初出店の地に選んだのは「岡山」その狙いは?
(岸下恵介キャスター)
中国のEVメーカーBYDの販売店が、岡山市にオープンするというニュースでしたね。
(中塚美緒キャスター)
中国地方では初めてのオープンでしたよね。
(前川裕喜記者)
このときは、佐藤理子アナウンサーが取材し、EVに試乗していて、その時「すっと滑らかに進む。走行音も静かで、快適です」と感想を述べています。 (岸下恵介キャスター)
乗ってみたいですね。
(中塚美緒キャスター)
滑らかとは、どんな感じなのか気になりますね。
(前川裕喜記者)
乗ってみたいという人も増えそうですが、BYDのEVは、コンパクトSUVタイプで価格は450万円からと、同じサイズのガソリン車より100万円から200万円くらい高い印象です。販売台数が世界一のBYDですから、巧みな販売戦略も注目されそうです。実は今、岡山県はEVとの関係が深まっているのです。 三菱自動車がEVを生産する岡山県。自家用車に占めるEVの保有台数は約9500台と、その割合は全国6位です。 中四国地方ではトップとなっています。伊原木隆太知事もEV先進県への意欲を示しています。
(岡山県 伊原木隆太知事)
「岡山だったらEVが意外といいよね。せっかく(県内で)生産している。日本で一番、EVが買いやすい、使いやすい地域にする。ずいぶん前から頑張っていて、ドカンと行きたい」 2024年度の当初予算には、EV関連の補助事業などに約2億2000万円を計上。 85万円を上限とする国のEVなどの購入補助に加え、県独自に18万円を上限とする充電設備設置への補助も行っています。 ただ、自家用車に占めるEVの比率はまだ1%程度で、大きな伸びしろがあります。 (前川裕喜記者)
EVは国が進める脱炭素政策の柱です。国は2050年に温暖化につながる二酸化炭素CO2の排出ゼロを目指しています。CO2排出の約6割は、衣食住や移動に関わるものだとされ、岡山県はEVで脱炭素の目標に挑戦しています。ただ脱炭素への方法は、EV1つだけではありません。香川県はこんな方法でアプローチしています。 (前川裕喜記者)
「昭和の時代にできた坂出市の工業団地。その挑戦は皆さんが見慣れた、この工業団地で始まっています」
瀬戸大橋に隣接する坂出市の番の州臨海工業団地。1960年代に造成が始まり約620ヘクタールの土地には、石油など重化学工業の企業が進出し、県の経済を支えてきました。 最初に進出した川崎重工業は、現在も造船事業を続けています。 得意とするのが、超低温の液体などを運ぶ船です。次の時代を見据え、世界で初めて造ったマイナス253度の液化水素の運搬船をここで量産しようとしています。 (川崎重工業坂出造船工場 荻野剛正工場長)
「坂出工場ではさらに大型の液化水素運搬船の建造を計画。運ぶ量では大型LNG船とほぼ同じ16万立方メートルの液化水素が運べる船。将来の水素需要にこたえられる船になる」 燃やして使える水素。CO2を排出しないため、新エネルギーとして注目され、関連の市場は、数兆円になるという試算もあります。 水素を作る際は、太陽光エネルギーが使われていて、日照条件の良い赤道周辺で生産されます。そこから日本への運搬ビジネスが始まろうとしています。 (脱炭素政策に詳しい 成城大学経済学部 平野創教授)
「もともと日本はエネルギー小国。国内の再生エネルギーだけで国内のエネルギーをまかなうことはできない。その分、海外から輸入せざるを得ない。液体や気体に変換して持ってこないといけない。液化水素は有力な選択肢」
香川県も水素供給網の構築に向けて調査などを始めました。
(香川県商工労働部 大野貴弘次長)
「地球温暖化の取り組みは経済成長の機会。香川県にとっても有効なので、関係企業や坂出市と一体となって進めていく」 (岸下恵介キャスター)
脱炭素イコールEV、という訳でではないんですね
(前川裕喜記者)
水素の関連技術は、自動車産業で内燃型のエンジンを得意とする日本が、世界で最も進んでいると言われています。ただEVにしろ水素にしろ、地方にとって「稼ぐ」産業に育てられるかが鍵だと専門家は指摘しています。
(成城大学経済学部 平野創教授)
「当初、太陽光発電でも日本が先行していて、液晶ディスプレーでも先行していたが、諸外国にシェアで逆転されてしまっている。技術をしっかりしたビジネスにつなげていければ日本は競争力を獲得していける。地元企業が何をしたくてどんな計画を持っているか、国に伝えるのが行政の役割。行政がどれだけ伝えられるかで補助金や規制緩和などの問題がクリアされる。企業と自治体が連携しないといけない」 今後、地域の製造業を巻き込み、企業を育成することも求められそうです。脱炭素をテーマに地域間では競争が激しくなろうとしています。以上、急上昇ニュースでした。
4月19日に電気自動車EVについて、こんなニュースをお伝えしました。
国内への普及が課題も…EV販売台数世界一のBYDが中国地方初出店の地に選んだのは「岡山」その狙いは?
(岸下恵介キャスター)
中国のEVメーカーBYDの販売店が、岡山市にオープンするというニュースでしたね。
(中塚美緒キャスター)
中国地方では初めてのオープンでしたよね。
(前川裕喜記者)
このときは、佐藤理子アナウンサーが取材し、EVに試乗していて、その時「すっと滑らかに進む。走行音も静かで、快適です」と感想を述べています。 (岸下恵介キャスター)
乗ってみたいですね。
(中塚美緒キャスター)
滑らかとは、どんな感じなのか気になりますね。
(前川裕喜記者)
乗ってみたいという人も増えそうですが、BYDのEVは、コンパクトSUVタイプで価格は450万円からと、同じサイズのガソリン車より100万円から200万円くらい高い印象です。販売台数が世界一のBYDですから、巧みな販売戦略も注目されそうです。実は今、岡山県はEVとの関係が深まっているのです。 三菱自動車がEVを生産する岡山県。自家用車に占めるEVの保有台数は約9500台と、その割合は全国6位です。 中四国地方ではトップとなっています。伊原木隆太知事もEV先進県への意欲を示しています。
(岡山県 伊原木隆太知事)
「岡山だったらEVが意外といいよね。せっかく(県内で)生産している。日本で一番、EVが買いやすい、使いやすい地域にする。ずいぶん前から頑張っていて、ドカンと行きたい」 2024年度の当初予算には、EV関連の補助事業などに約2億2000万円を計上。 85万円を上限とする国のEVなどの購入補助に加え、県独自に18万円を上限とする充電設備設置への補助も行っています。 ただ、自家用車に占めるEVの比率はまだ1%程度で、大きな伸びしろがあります。 (前川裕喜記者)
EVは国が進める脱炭素政策の柱です。国は2050年に温暖化につながる二酸化炭素CO2の排出ゼロを目指しています。CO2排出の約6割は、衣食住や移動に関わるものだとされ、岡山県はEVで脱炭素の目標に挑戦しています。ただ脱炭素への方法は、EV1つだけではありません。香川県はこんな方法でアプローチしています。 (前川裕喜記者)
「昭和の時代にできた坂出市の工業団地。その挑戦は皆さんが見慣れた、この工業団地で始まっています」
瀬戸大橋に隣接する坂出市の番の州臨海工業団地。1960年代に造成が始まり約620ヘクタールの土地には、石油など重化学工業の企業が進出し、県の経済を支えてきました。 最初に進出した川崎重工業は、現在も造船事業を続けています。 得意とするのが、超低温の液体などを運ぶ船です。次の時代を見据え、世界で初めて造ったマイナス253度の液化水素の運搬船をここで量産しようとしています。 (川崎重工業坂出造船工場 荻野剛正工場長)
「坂出工場ではさらに大型の液化水素運搬船の建造を計画。運ぶ量では大型LNG船とほぼ同じ16万立方メートルの液化水素が運べる船。将来の水素需要にこたえられる船になる」 燃やして使える水素。CO2を排出しないため、新エネルギーとして注目され、関連の市場は、数兆円になるという試算もあります。 水素を作る際は、太陽光エネルギーが使われていて、日照条件の良い赤道周辺で生産されます。そこから日本への運搬ビジネスが始まろうとしています。 (脱炭素政策に詳しい 成城大学経済学部 平野創教授)
「もともと日本はエネルギー小国。国内の再生エネルギーだけで国内のエネルギーをまかなうことはできない。その分、海外から輸入せざるを得ない。液体や気体に変換して持ってこないといけない。液化水素は有力な選択肢」
香川県も水素供給網の構築に向けて調査などを始めました。
(香川県商工労働部 大野貴弘次長)
「地球温暖化の取り組みは経済成長の機会。香川県にとっても有効なので、関係企業や坂出市と一体となって進めていく」 (岸下恵介キャスター)
脱炭素イコールEV、という訳でではないんですね
(前川裕喜記者)
水素の関連技術は、自動車産業で内燃型のエンジンを得意とする日本が、世界で最も進んでいると言われています。ただEVにしろ水素にしろ、地方にとって「稼ぐ」産業に育てられるかが鍵だと専門家は指摘しています。
(成城大学経済学部 平野創教授)
「当初、太陽光発電でも日本が先行していて、液晶ディスプレーでも先行していたが、諸外国にシェアで逆転されてしまっている。技術をしっかりしたビジネスにつなげていければ日本は競争力を獲得していける。地元企業が何をしたくてどんな計画を持っているか、国に伝えるのが行政の役割。行政がどれだけ伝えられるかで補助金や規制緩和などの問題がクリアされる。企業と自治体が連携しないといけない」 今後、地域の製造業を巻き込み、企業を育成することも求められそうです。脱炭素をテーマに地域間では競争が激しくなろうとしています。以上、急上昇ニュースでした。