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2024.06.12

旧国鉄型電車特急が引退間近 国土交通大臣も視察に…特急「やくも」”撮り鉄歓迎”のまち【岡山】

撮影を楽しむ鉄道ファン、いわゆる撮り鉄のマナーが度々問題となる中、撮り鉄を歓迎している地区が高梁市にあります。全国から注目を集める地域と撮り鉄の共存。住民による温かな「おもてなし」がカギとなっています。

約40年ぶりに新型車両が導入されたJR伯備線の特急やくも。岡山駅と出雲市駅の間の沿線には様々なビュースポットが点在します。それを狙うのが「撮り鉄」。お気に入りの列車と風景をカメラに収めようと日本各地へ出向きます。

(東京から来た人)
「ただ、旅行に行くだけじゃなくて、こういう何もないところだけど、何もなくていいところ、いろいろ発見できたし、撮り鉄仲間とのいろんな情報交換しながら、みんなで旅行を立てていこうかとか、そういう楽しみもできたし、子供も喜んでついてくるので」

しかし撮り鉄は、沿線に住む人やJRに煙たがられることも…。

(さんいん中央テレビ 田中祐一朗記者)
「こちらの男性、線路近くでカメラを構えています」

印象を悪くするのが、一部の撮り鉄によるルール違反。私有地の侵入や線路の立ち入り、さらには違法駐車やポイ捨てなど、問題行動はあとを絶ちません。そんな中、地域と撮り鉄が共存し注目を集めているのが、高梁市の北東部に位置する川面地区です。

(TEAMひとよせ 青野学而さん)
「排除するんじゃなくて、せっかくこんな我々のこの小さい町にたくさん来ていただけるっていうことはいいことなんだから、ウェルカムな気持ちで接すれば、向こうの気持ちも和らいでうまく相互に、協力しあってできるんじゃないかって」

沿線に住む青野学而さんはおもてなしで問題行動が抑えられるのではと2023年5月、撮り鉄を歓迎するボランティア団体、「TEAMひとよせ」を結成しました。実は川面地区は橋りょうが複数あるなど撮影スポットが多く、撮り鉄から聖地と呼ばれている場所。鉄道カメラマンの坪内政美さんは。

(鉄道カメラマン 坪内政美さん)
「全国で稀なんですけど、もう地区全域にわたって撮影ポイントが点在している。ここに丸一日いても飽きないぐらいのいろんな風景が春夏秋冬この地域で撮れる地域っていうのは非常に珍しいです」

(TEAMひとよせ 青野学而さん)
「関西圏と関東圏で6割7割なんですよ。だからちょっと我々もちょっとびっくり。いつからこんなことに?という話なんですけど、それが一気にやくもの381が引退で火がついたみたいになったんだなっていうのは認識できたんです。雑誌やSNSを見ると、いっぱい出てくるんですね」

人口約960人の小さな集落へ、桜のシーズンなど多い時には1日約400人の撮り鉄が。そこで「撮り鉄歓迎」の一環として用意したのがトイレ。備中川面駅のトイレは壊れて利用できないため簡易トイレの設置。さらに近くの神社などから約100台分の駐車スペースを借りたほか、地元業者に弁当の販売も働きかけました。さらに…

(三竿雅義 記者)
「こちらのマスコット、500円の募金でいただけます」

(TEAMひとよせのメンバー 呼びかけ)
「お好きなのをどうぞ」

地域の高齢者が手縫いした「やくもストラップ」。持つと良い撮影ができるお守りとしてSNSで拡散され、撮り鉄の間では「ハッピーやくも」と名付けられています。

(東京から来た親子)
「すごいあの一つ一つ手作りでね。布とかで、鈴とかビーズも使ってうれしい」

(大阪から来た人)
「歓迎していただくのはありがたいことです。僕らのマナーを守って、地元の方も歓迎していただくということ。いい関係と思う」

地域が一丸となった温かなおもてなしで、撮り鉄の問題行動はほとんど見られなくなり、JR西日本からは感謝状が届きました。

(JR備中高梁駅 国富靖二駅長)
「旧型やくもが姿を消すということで、たくさんの人が写真を撮りにきている。そんな中、地域の人々の取り組みで周辺の人々の生活に支障ないような取り組みをしてもらい大変助かっている」

そして。

(斉藤鉄夫 国土交通大臣)
「これがハッピーやくも。これが鉄道ファンのお守りになっているんですよね」

(TEAMひとよせ 青野学而さん)
「お気に入りの物をお持ちください」

(斉藤鉄夫 国土交通大臣)
「1つ買いますけど。私のお守りにします。」

川面地区のムーブメントは国交大臣の耳にも。鉄道ファンと地域、そして鉄道会社の共存は珍しいと5月25日、撮影スポットを視察に訪れました。

(斉藤鉄夫 国土交通大臣)
「撮り鉄の皆さんが、自分たちもちゃんとマナーを守りながら、楽しもうということを自ら広められたという話を聞いて、ちょっと涙が出そうになりました。」

(TEAMひとよせ 青野学而さん)
「川があって鉄橋があって山がある、日本の原風景、鉄道の原風景は大事な財産ですねと言われうれしかった。これで終わってはいけないという責任感とプレッシャーがある」

撮り鉄にやさしいおもてなし。6月に国鉄時代の特急やくもはラストランを迎え、川面地区には再び熱い視線が注がれます。