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2024.06.28

“音を頼りに”打ち合う卓球「サイレント・テーブルテニス」林田一美選手の思い【キラキラアスリート岡山】

岡山・香川の頑張っているアマチュアアスリートを応援する「キラキラアスリート」。今回紹介するのは、岡山市南区の岡山市総合文化体育館で5月19日に行われた岡山県障害者スポーツ大会・卓球競技で、パラ卓球・STT(サイレント・テーブルテニス)の部に出場、女子の部で優勝した備前市の林田一美選手(61)です。

卓球台のネットの上で互いに激しく打ち合う通常の卓球と異なり、4個の鉛の球が入った専用のボールを、ネット下の隙間をゆっくり通過させながら音を頼りに打ち合う、視覚障害者が行う卓球競技・STT。専用の卓球台を使い、木製ラケットの打球音やボールが転がる音、審判の声を除いては静寂な環境下で行われるため、応援する人も心の中で一喜一憂。その試合の様子の一部を動画でご紹介します。

大会終了後、林田選手にSTTという競技に取り組むことになったきっかけやその魅力、練習環境の現状などを聞きました。
(撮影と聞き手:OHK岡山放送 西村和子)


Q:今大会の結果は優勝。大会を通じての感想は
(林田一美選手)
「練習がなかなかできていない状態なのに、頑張って(大会に)出てきて一緒に試合が出来て楽しかったです。テーブルテニスという特殊な台なので、みんな練習がなかなか出来ていない。そんな中で、この大会のために一生懸命少しずつ、「普通の(卓球)台」を使って練習したりして、出場できた人たちとまた来年(2025年)も頑張ってやっていきたい。
(事情で競技を続けられない人も出てきたりするが)みんなで頑張っていこうということでまとまったので良かったかなと思います。」

Q:サウンドテーブルテニス(STT)競技を始められたきっかけは?
「盲学校に入って何かクラブに入らないといけないということで、自分でできるスポーツとなると、運動音痴の自分でも卓球だったら転がすだけなので、簡単かなと思って。最初は見えていた(視力があった)ので、見えない人たちと一緒に(試合を)しても勝てていたが、次第に負けてしまうようになった「悔しさ」があって、ちょっとずつ練習を頑張って続けていました」

Q:STTのボールには4つの(小さな)鉛が入っており、その音を頼りに打っていくというスポーツ。競技の魅力は?
「子どもからお年寄りまで、誰でもできるスポーツだと思っています」
Q:この日はアイマスクを着用しての試合。これは(競技に出場する)皆さんのなかでは、見えている方も参加できる?
「備前市では、健常者の方と一緒に練習をするときは、健常者にはアイマスクはしてもらっていないです。全国大会だと、アイマスクを「しない部」と「する部」両方があります」

Q:林田選手にとって、卓球競技を行う際の持ち味、ここだけは誰にも負けないということは何?
「最後まであきらめないところですか(笑)」

Q:競技をするうえで参考にしている選手はいらっしゃいますか
「はい、岡山盲学校に浅野紀美江先生という方がいらっしゃって、その方を目標に頑張ってきています」

Q:試合前のルーティーンは?
「試合前というよりも、なかなかできない練習を月に2回から週に2回へと増やしています」

Q:競技を続ける中、これからの夢や目標は
「特殊な(卓球の)台なので、どこでもできるような環境が作っていけたらいいんですけど、卓球台自体が高額で、岡山県でも限られた場所しかないので、いろんな所で練習ができる環境があったらいいなと思います」


STTを楽しむ人すべてが、なかなか思うように練習もできず、試合に出ることも難しい状況であると語った林田選手。対戦相手には80歳を過ぎた選手もいて、「頑張って(大会に)出てくる」という言葉に、試合ができることの喜びと、もっと練習して強くなりたいというメッセージが伝わってきます。

「本はよく読む」という林田さんが好きな作家は、岡山県美作市在住のあさのあつこさん。あさのさんの作品はパソコンから音声をダウンロードして、音で読書を楽しんでいるそうです。今回の「キラキラアスリート」も、撮影した試合をそのままお届けします。動画を閲覧できる人も、視聴の“聴”のみで楽しんでみてはいかがでしょうか。