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2024.07.12

健常者と同じようにサイレンの“音”を…アプリで聴覚障害者の命を守れたら…岡山大学病院医師の挑戦

岡山大学病院の医師が中心となり、聴覚障害者の命を守るアプリの開発が進んでいます。2024年度の完成を目指し、プロジェクトが大詰めを迎えています。

(片岡祐子准教授と聴覚障害者との実証実験やりとり)
「かすかに聞こえる」「聞こえない」
「こっちが震えた?」
「かなり小さい音になっているので気づくかな、ちゃんと振動しているのでOKです」

開発が進んでいるのは、聴覚障害者に緊急情報を提供するアプリ「D HELO(ディー ヒーロー)」です。腕につけた端末が、救急車などの緊急車両や津波のサイレンなどの音を感知し、振動と画像で音の情報を届けます。

岡山大学病院耳鼻咽喉科の医師で、聴覚支援センターの准教授、片岡祐子さんが中心となり、2022年度から3年かけて実用化を目指しプロジェクトを進めています。

(岡山大学病院聴覚支援センター 片岡祐子准教授)
「機械学習を繰り返すことで精度が上がってきている。2023年度の末からは、開発部隊と一緒に作るところから少しずつ難聴者、ろう者と一緒に、それをどういう形で使えそうか考える。社会にどういう形でこの問題に向き合ってもらうか、一緒に考えるステージになっている」

大手電機メーカー・富士通などと連携しながら試作を重ね、2024年、岩手県と岡山県で聴覚障害者約40人を対象に実証実験が行われています。音にアプリが反応し、聴覚障害者が端末の振動に気が付く時間などを検証した他、使用した時の感想や意見を聞き取ります。

(聴覚障害者)
「救急車の音、車を運転中、窓が閉まっていても音が入る?」
(片岡祐子准教授)
「車の中の雑音があるから難しい時もある」
(聴覚障害者)
「例えば車そのものがサイレンの音を感知するようなことはできないのか?」
(片岡祐子准教授)
「できればいいなと思う。ハンドルの辺りに何か刺激がくるとか、どこかのライトが付くとかしたら便利」

(片岡祐子准教授)
「緊急情報の第一報は音から入ってくることが非常に多くて、命の危険にさらされることが今でも多い。そこを何とか安全に安心して暮らせる世の中になったらいい」

片岡さんは、聴覚障害者の意見や要望を聞きながら改良を続ける他、PR動画を制作して、このアプリの周知に取り組んでいます。

(聴覚障害者)
「(災害の時)いつもテレビを見ているわけではない。画像を見て気づけばすぐに逃げられる」

これまで、片岡さんを突き動かしてきたのは、ある悲しい出来事です。

1950年、岡山の盲学校とろう学校の寄宿舎が火事で全焼、盲学校の子供たちは全員無事だったものの、音が聞こえないろう学校の子供たち16人が亡くなりました。

(岡山大学病院聴覚支援センター 片岡祐子准教授)
「今もまだその状況が変わっていなくて、災害の時に困っている人がたくさんいるという事実があるから、何か次の一手を担っていけたら」

「D HELO」という名前にはこのアプリが聴覚障害者にとってヒーローになってほしいという思いが込められています。

(片岡祐子准教授)
「誰もが取り残されない社会、災害時も平常時も目指していきたい」

2024年度中の実用化を目指し、誰もが安心して暮らせる社会の実現のために、片岡さんの挑戦は続きます。