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2023.09.12

教え子たちがエール!「もう一つのWBC」障害者野球世界一に挑んだ34歳中学校教諭の戦い【岡山】

「もう1つのWBC」と呼ばれる障害者野球の世界大会に、岡山のチームから5人の選手が出場しました。その中に、13年前の挫折を乗り越え大舞台に立った選手がいます。野球への情熱を貫き、成長した姿を追いました。

ついにその舞台に立つ日がやってきました。13年越しの夢をかなえた、新見市の槙原淳幹さん(34)です。

(槙原淳幹さん)
「今まで見たことがない景色、感じたことがないことをたくさん感じて、本当に僕、幸せ者だなと思って。こんな舞台に立たせてもらって」

9月10日までの2日間、名古屋市で開かれた障害者野球の世界大会。世界5つの国と地域から、障害のある選手が集い、世界一を争いました。34歳になった槙原さんは、その日本代表に岡山のチーム「岡山桃太郎」から選ばれました。

槙原さんは生後10カ月の時、事故で右手が動かなくなりました。小学3年生で野球を始め、高校時代は新見高校の軟式野球部のレギュラーとして全国優勝を成し遂げました。中学3年生の時に入団した岡山桃太郎では、エースとして活躍!勝つことにとことんこだわり、野球一筋でした。その活躍ぶりは全国でも指折りで、21歳だった13年前の世界大会前には、日本代表の有力候補に挙がっていました。しかし…

(槙原淳幹さん 2010年)
「守備をして足をピタッと開いたらいて、ブチッ。全治3カ月くらい」

代表入りは叶わず、スタンドから仲間の雄姿を見守りました。

(槙原淳幹さん 当時21歳)
「野球の神様がまだ早いぞと、まだお前やるべきことがあるぞと伝えてくれたよう」

その後は目指していた教師に。野球を通して学んできたことを、次の世代を担う子どもたちに伝えてきました。

2011年には、東日本大震災ボランティアとして、被災地の子供たちと野球で交流しました。一方、選手としても野球を続けてきた槙原さん。「岡山桃太郎」のキャプテンとしてナインをまとめ、チームは日本一にも輝きました。そのリーダーシップが認められ、初めて代表入りの切符を手にしたのです。

(新見第一中学校の教室で 槙原淳幹さん)
「前から言っているように先生、運動会の日にいません。自分の学校の運動会に行かないなんて最初で最後だと思うし、運動会に担任がいないなんて最初で最後だと思う。ぜひいい運動会にしてほしい」

9月9日、バンテリンドームナゴヤで開会式が開かれました。出場したのは日本、アメリカ、韓国、台湾、プエルトリコ。総当たり戦で世界の頂点を争います。障害を感じさせない選手たちの迫力のあるプレーが飛び出します。岡山桃太郎からは、槙原さんの他にも、早嶋健太選手(27)、浅野僚也選手(28)、井戸千晴選手(28)、高月秀明選手(25)の4人が出場しました。

槙原さんは、日本代表の副キャプテンを任されました。

(槙原淳幹さん)
「ヒット打つとかいい守備するとか、それだけじゃなくて、チームが勝つために自分ができる役割、気配りや声掛けや盛り上げ、そういう事は死ぬ気でやりたい」

(日本代表 山内啓一郎監督)
「岡山桃太郎でキャプテンとしてやってきた経験を日本代表の中で生かしてくれると思った」

9月9日、初日のプエルトリコ戦にセカンドで出場した槙原さんは、堅い守備でチームに貢献します。

岡山の選手の活躍もあって、この試合4対1で日本が勝利します。

その後も勝ち星を挙げ、3戦全勝で迎えた最終のアメリカ戦、スタンドに集まったのは、槙原さんの大応援団です。

(槙原さんの母 昌枝さん)
「自分の体で伝えたいと彼は思っていた。きょうは中学校の運動会だけど、自分の頑張る姿を通して生徒たちに見てほしいという気持ち」

【教え子たちからのメッセージ動画】「槙原先生頑張ってください。世界一!」

(大学時代の友人)
「誇らしい」「槙原さんの熱さをグラウンドでも輝かせてほしい」

この試合、勝つか引き分けで世界一が決まります。槙原さんはベンチスタート。声かけで仲間を鼓舞します。

(槙原さん スタンドに声かけ)
「もっともっと日本の大応援団の熱い応援がほしいです。一緒に世界一になりましょう!」

日本は、岡山の高月選手のタイムリーなどで得点を重ねます。エースの早嶋選手もアメリカ相手に得点を与えません。そして・・・日本は4-0で勝利。2大会連続、4度目の世界一を成し遂げました。

(槙原淳幹選手)
「家族、スポーツ少年団の時の監督、大学の友達、教え子、遠い岡山からこんなにもたくさんの人が来てくれたおかげで、世界一になれて本当に幸せ」

野球の神様は槙原さんの13年を見つめていたに違いありません。追い続ければ夢はかなう。この経験と感動は、槙原さんから、きっと多くの子供たちに伝えられるはずです。