OHK 8Ch

  • LINE友だち追加
外国人観光客を見て「常識を見直せ」関西万博・瀬戸芸開催を機に目指したい“持続可能な”観光【急上昇N】

2025.03.19

外国人観光客を見て「常識を見直せ」関西万博・瀬戸芸開催を機に目指したい“持続可能な”観光【急上昇N】

4月、大阪・関西万博と瀬戸内国際芸術祭が始まります。岡山・香川ににぎわいをもたらすと期待されていますが、実際はどうなんでしょうか。担当は前川記者です。

(前川裕喜記者)
「にぎわいをもたらすと言って間違いなさそうです。大阪の人工島、夢洲にお目見えした周囲2キロの「大屋根リング」と呼ばれる大阪・関西万博の会場です。4月13日から半年間、国の内外の様々な文化や技術が発信される予定で、外国人観光客を含め約2820万人の来場が見込まれます。

香川県は4月30日から4日間、会場で船の形のブースを出し、香川の自然や文化、歴史などを発信します。
急上昇 観光CG1
急上昇 観光CG2
一方、岡山県も8月22日から3日間、「桃太郎の夏休み」をテーマにブースを出します。体験エリアなどを設置し自然や文化を発信する予定です。

万博と期間が重なるのが、岡山・香川で開かれる現代アートの祭典、瀬戸内国際芸術祭です。会期は4月18日から11月9日までで、春、夏、秋の3シーズンに分けて開かれます。11の離島と6つのエリアが舞台となります。2010年から3年に1度のイベントですが、海外メディアでも大きく取り上げられ、コロナ禍前には100万人以上が訪れました。
急上昇 観光CG3
(前川裕喜記者)

「万博に来て瀬戸芸を周遊する人が増えると予想されます。特に期待されるのが外国人観光客です。岡山県が3月に公表した、2024年の1年間に県内で宿泊した外国人の数は延べ約51万3000人でコロナ禍前の2019年を上回り過去最多となりました。2025年もこの勢いは続いていて、その中で万博と瀬戸芸開催ということで期待は高まります。

こうした効果を最大に高めるためのポイントがこちら、「常識を見直す」です。どういうことなのでしょうか。

(岡山県 伊原木隆太知事)
「(英語で)ここのオープンは1933年・・・」

岡山県の伊原木隆太知事が招いたのは、中東サウジアラビアの駐日大使です。岡山の老舗料亭で、地元の粋を集めた数万円の懐石ランチをふるまいました。イスラム教徒の食のタブーに合わせた特別な献立です。

(岡山県 伊原木隆太知事)
「サウジアラビア大使が岡山に来ることはなかった。本当に素晴らしい機会をもらえた」

サウジアラビアは豊富な石油資源により富裕層が多く、付加価値の高い旅行を好みます。次回5年後の万博の開催地という縁もあり、2025年は来日する人が増える見通しです。県はこうした富裕層向けに観光商品の開発に力を入れています。

この動きについて、地域活性化や観光に詳しい専門家はこのように話します。

(香川大学大学院 地域マネジメント研究科 原真志教授)
「日本人は遠慮して、控えめなプライシング(価格設定)しかしない。数千円というところを万を超えるような常識のちょっと上(の価格設定)もやって良い。プチ富裕層が狙い目」
急上昇 原教授
・・・お得な値段で良いものをというのが私たちの常識ですが、外国人は良いものにはたくさんお金払ってもかまわないということですか。

(前川裕喜記者)
「私たちの常識とは少し異なりますよね。これからは外国人の視点で価格の戦略を練り直す必要がありそうです」

・・・あと気になるのが、岡山・香川ではまだないかもしれませんが、外国人観光客が殺到するオーバーツーリズムの問題もありますよね。

(前川裕喜記者)
「オーバーツーリズムの問題は懸念されます。香川大学大学院の原教授も「客の数よりも質」が大切だと指摘していて、その質についてこのように語ります」

(香川大学大学院地域マネジメント研究科 原真志教授)
「特別な経験をしたという感覚があるとリピーターになると言われる。人と出会って地元のおじいちゃん、おばあちゃんと話をするとか、昔話や歴史文化の話をする。人と人とのつながりがセットになれば深い経験として記憶に刻まれてファンになってもらえる。地域のことが分かるセンシビリティ―(感受性)を持っている人を相手にするくらいの選別をするつもりでやった方が良い。地域活性化に成功しているところは10年前、20年前から同じ」

・・・岡山・香川をリスペクトしてくれる人が増え、何度も足を運んでもらえると良いですよね。

(前川裕喜記者)
「原教授は外国人との交流によって地域の人が地域の良さに気付くという効果もあるとしています。受け入れ側の私たちも常識を見直した上で、持続可能な観光の形を描くことが求められています」