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被災地に響く歌声は復興への活力

2020.03.13

被災地に響く歌声は復興への活力

懐かしの歌謡曲やフォークソングの生演奏とともに、思い思いに歌う人たち。
中には歌詞に想いを巡らせ、涙ぐむ人もいます。
私が倉敷市真備町岡田地区で開かれている歌声喫茶を初めて取材したのは、昨年の春。
皆さんの伸びやかな歌声に圧倒されたことを覚えています。

2015年にスタートした歌声喫茶は毎月、地域の憩いの場として開かれてきましたが、
西日本豪雨で地区の住民の約3分の2が被災。
会場の公民館も2メートル以上浸水し、中断を余儀なくされました。
「少なくとも1年は開催できないだろう」。そう思ったと、
実行委員長で自らも自宅が全壊した前田光男さんは振り返ります。
しかし、時が経つにつれ、その気持ちを変えていったのは、
常連の参加者から次々と寄せられた言葉でした。

 「いつから歌声喫茶、やるん?」

 「こんな時こそ、歌おう」

一念発起した前田さんたちは、泥除けのすのこやブルーシートで公民館を仮復旧し、
歌声喫茶を再開させました。
久しぶりの再会を喜び抱き合う人、手を取り合って互いの近況を話す人。
歌を楽しむための場だけでなく、地域の絆を確かめ合える場の歌声喫茶が、そこにはありました。

今月で被災から1年8ヵ月。今も約4200人が仮住まいでの生活を余儀なくされています。
復興への道はまだ半ばですが、苦難を乗り越え歩みを進める人たちの歌声はきっと、
真備町の活力となるはずです。

執筆:新田俊介(OHK報道部)
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