会社の冷凍庫にあった使い捨ての小さな保冷剤をいくつか拝借し、魚体とともにラップでグルグル巻きにする。少しでも隙間があれば電車内に漁港の香りが漂うことになり、発信元と疑われる私は周囲の乗客から注目を浴びることになるだろう。挙句、「あ、この人テレビで見たことある。意外に魚っぽい香りの人なんだ・・・」と思われるのは心外だ。「♯萩原アナ　♯魚臭い」・・・怖い。グルグル巻きに力が入る。グルグル、グルグル、グルグル、グルグル・・・・・。





これが包帯なら、ミイラ。

さらにミイラを大きめの袋でくるみ、カバンに入れてみる。





ピッタリだ。


40cmの真鯛をグルグル巻きにして入れるために作られたカバンではないのか？私はこの日のために、このカバンを使ってきたのか。

おかげで電車の中で、怪訝な表情で見られることはなかった。誰も私が持っているカバンの中に40cmの真鯛が潜んでいることなど知る由もないだろう。「もし、自宅まで歩いている途中で警官に職務質問され、カバンの中を見られたら？」と想像する。されなかったけど。

自宅で（妻が）さばいた真鯛はとても新鮮で甘みがあり、コリコリしていて美味しかった。大満足だ。

ただ、この真鯛の身になって1日を振り返ってみる。早朝、住み慣れた穏やかな瀬戸内海を離れ、船からトラック、トラックから市場、市場から鮮魚店、鮮魚店からＯＨＫで生放送、何万人かの視線を浴びた後、グルグル巻きにされ、おじさん会社員のカバンの中に押し込められ、電車。からの萩原家で解体→おじさんの胃の中。なんという激動の日報だろう。特に後半の流れは通常の真鯛ならあまり経験し得ないのでは。

シチュエーションはちょっと違うけど、「およげ！たいやきくん」を思い出した。