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2023.06.30

子供のアレルギーが後押しに…44歳社長が異業種「 誰もが食べられるうどん作り」に挑む理由【香川】

讃岐うどんの本場、香川県で、アレルギーや宗教上の理由を気にせず食べられるうどんを開発している男性がいます。その狙いと開発に込めた思いを取材しました。

香川県宇多津町の製麺所で進められるうどん作り。真剣な表情を見せるのは、高松市出身の村上モリローさん(44)です。視線の先にあるこのうどんは、私たちが普段食べるものと少し違うんです。

(村上モリローさん)
「米粉とでんぷんで作られている。制限があって食べられない人たちが食べられるようになるというのが大きい」

村上さんらが手掛けるのは、原材料に小麦を使わないグルテンフリーの麺。小麦アレルギーがある人も食べられるように米粉を使います。

「おっ。うまい。ちょっと理想に近づいた気がする」

米粉で作る麺は小麦より製造コストがかかるうえぷつぷつと切れやすく手頃な価格でコシのある食感に仕上げるのが課題です。製造方法も異なる中、どこまで本場の味に近付けることができるか、試行錯誤を続けます。

「コシをどうするとか、もっと柔らかい方がいいのかとか、これから決めていかないといけない。今のこのくらいでいいのかとか」
「改良できる余地がどこまであるのか。シンプルなだけに」

実は村上さん、名刺やポスターなどのデザインを手掛ける会社の社長です。開発中のうどんは、会社の新規プロジェクトでオープンさせるうどん店での提供を目指しています。飲食店の出店は初めて。畑違いの業種に乗り出したきっかけは身近な存在でした。

(人生は上々だ 村上モリロー社長)
「息子が乳製品アレルギーで、お菓子など食べられるものが少なく、選択肢が狭まれていたことに違和感を持っていた」
8歳の長男、挑士郎くんは、乳製品アレルギーがあり、バターやチョコが入った製品が食べられません。周りの子供と同じように気軽に食を楽しめたら…、そんな思いが村上さんの背中を押しました。

(村上モリローさん)
「息子が食べられないことで、『自分がいつも食べられるものを食べられない人がいる』とわかった。息子と同じように違和感を持つ人がいると分かって、どうにかしたいと思った」

そのこだわりは出汁にも、宗教上の理由などで出汁に使うイリコが食べられない人のためトマト果汁など植物由来の食材を使い、誰もが口にできるうどんを目指します。

(村上モリローさん)
「選択肢を増やしたいという感覚。同じ食卓で同じように同じものを食べて、楽しめる環境ができたらメリットとして大きい」

この日、村上さんが訪れたのは、高松市牟礼町に2023年12月にオープンさせる予定の店の建設現場です。店は、木造2階建て。うどんを提供する空間にも、こだわりを詰め込んでいます。

(村上モリローさん)
「こちらが瀬戸内海。志度湾が眺められる。ここにテーブルが並んで、景色を見ながら食べられる感じにする」

オープンまで残り5カ月。店の準備も着々と進んでいます。村上さんの強い思いから始めたプロジェクト。誰もが口にできる新たな「うどん」の提供を目指して、村上さんの挑戦は続きます。

(村上モリローさん)
「自分みたいな讃岐うどんに関しては素人の人間が、新しい選択肢を作ろうとして、それを見た他の職人や精通している人が『うちもやろうかな』となったら、本当の意味で世界中の人が食べられる讃岐うどんになっていくと思う。とりあえずやってみる。失敗したらその時考えたらいい」